雑誌や新聞を読んでいて、プラットホームや車台という単語を目にしませんか? そこで今回はそのプラットフォームについて、調べて自分なりに解釈してみました。
新聞の見出しで、“日産自動車、ルノーとプラットホーム共用化”、“トヨタ自動車、今後5年で車台を10種類に削減”・・・という言葉を目にします。
では、そもそもプラットホームとは何か?
プラットホームとは車の床部分。 建物の土台、基礎であり、サンドイッチでいえばパンを指すようです。 サンドイッチはパンの上にレタスやベーコン、スクランブルエッグを載せるが、それと同様に自動車も車台の上にエンジンやミッション、インストルメントパネル、シートなどを載せる。
もちろん、上に載るトッピングも大事だけれど、パンがおいしいものでなければそのサンドイッチは台無しでしょ? 自動車もプラットホームの出来で評価が大きく左右する場合が多いと聞きます。
もし、FF車(フロントエンジン、フロントドライブ)でミッドシップレイアウトを採用したら、急な上り坂でトラクションの掛からないものになってしまいます。 何事も基本の考え方が大事。
プラットホームは前部分のエンジンコンパートメントと、室内の床部分(フロア)に分けられ、エンジンコンパートメントはラジエータから室内との境となるダッシュパネルまで、フロアはそこからラゲッジルーム後端までとなる。
「普段は目に触れない部分だから、できるだけ同じものを使って開発費を下げましょう」というのが各自動車メーカーの考え。
プラットホームには多くのの構成部品が取り付けられる。 プラットホームを共用することで構成部品の開発費、管理費まで削減でき、自動車メーカーにとってはいいこと尽くし。 プラットホームとその構成部品を新規開発するには、数百億円が必要らしい。
では、様々な車種をどう区分けしているのか?
フロアは同じ駆動方式の車種ならば、基本的に共用可能。 FF(フロントエンジン、フロントドライブ)ならばマーチからティアナ、FR(フロントエンジン、リヤドライブ)の場合はスカイラインからプレジデントまで。
駆動方式の違いにより、プロペラシャフトの有無やミッション、燃料タンクなどの部品配置が大幅に異なるので、FF車とFR車の共用は難しいと思われます。
さらに同じFFでも、マーチとティアナでは要求されるボディ剛性や取り付けられる部品の大きさにも差があるので、フロアを共有してしまうとマーチにはオーバークオリティになってしまう。
そこで駆動方式と車格により各メーカーで数種類ずつを用意しているのが実状。
では、実際はどの車とどの車が、プラットホーム共用を共用しているのか?
日産の旧型スカイラインとフェアレディZはどうでしょう? どちらもフロントミッドシップレイアウトのFR車で搭載されるエンジンは同形式。
でも、4ドアセダンとスポーツカーではデザインも車両寸法もまったく違う・・・。 しかし調べた結果、実は見えない部分のプラットホームはまったく同じ! エンジンが同形式なのでエンジンコンパートメントはもちろんまったく同じ。
でも、フロアまで共通とは想像しにくいですよね?
では、そのマジックとは?
フロアは後席足元までのフロント部と、それ以降のリヤ部に分けて設計され、製造工程で溶接される。 後席に座り足を引くとかかとが付く場所、ほぼ垂直の壁になっている。 その壁の根元がフロントフロアの後端。 その後端をカットすればホイールベースの長さはいくらでも調整可能。 旧型スカイラインとフェアレディZではちょうど200mmカットしているのだ。
では、オーバーハングはどうしているのだろうか?
この2車種では、スカイラインでは縦置きのマフラー配置をフェアレディZでは横置きとし、オーバーハングを切り詰めることに成功。 これでホイールベースもオーバーハングも短くなりカッコいいスポーツカーのフロア設計完了。
だから、カタログを見るとこの2車種の重量配分、サスペンション形式など共通点が多数見つかるはず。 もしかしたら、フェアレディZの一部の限定車(ニスモバージョンなど)は発生する出力の向上に合わせ、リヤフロアを中心に補強が施されているかもしれないが、基本は同じ。
要するにフロントフロアとリヤフロアのつなぎ目となる部分の断面形状さえ統一しておけば、異なる車格のフロアでも合体可能という訳。
逆に専用プラットホームは、かなりの贅沢品。
腕時計でもオリジナルのムーブメントを搭載するモデルが少ないのと同様(あのロレックスでさえ、自社開発のムーブメントを搭載しているのは最上級モデルのコスモグラフデイトナのみ)、専用プラットホームのクルマにはそのメーカーの意地や社運がかかっている。
国産の代表はホンダ S2000。 高剛性のオープンカーを成立させる為、センタートンネルは閉断面で背骨のように通った構造。 専用プラットホームを採用するクルマはスポーツカーが多い。 S2000の総生産台数は多く見積もっても2万5000台程度。
その台数の為に専用プラットホームを新規開発するとどうなるか?
部品を製造するにはまず、金型(金属部品をプレス加工し、成形する型のこと)が必要。
金型は大きな部品では製作費に数千万かかる。 仮に型費を2500万円とすると、1台あたりにかかる償却費は1000円。 これが共用プラットホームを採用するアコードなら総生産台数は100万台、1台あたりにかかる型償却費は25円で済む。 その差975円!
1つの部品を例にとっただけでこの差だから、プラットホーム全体の部品点数を考えると恐ろしい差。 原料となる鉄の価格は1tで6~8万円だから、原料費より型償却費の方が上回ってしまう。
ところで、フロアの厚さはどのくらいあるのだろうか?
様々な部品が取り付く上に、乗員の体重なども支えるのだから、かなりの厚さがあるはず・・・だが、調べるとこれが意外と薄い。
フロント部で約1.2mm、ラゲッジルームの板厚はさらに薄く、0.7mm程度しかない。 形状を複雑に折り曲げ、曲率を付けて剛性を確保している。
もし、センタートンネル上面が平面で設計されているクルマがあり、力の強い欧米人が思いっきりサイドブレーキレバーを引いたなら、テコの原理により根元に応力集中したフロアパネルは剥がれてしまうかもしれない。
自動車メーカーも厳しい生き残り競争を勝ち抜く為に、合理化を進めざるを得ない。
各国での厳しい法規や衝突安全基準、歩行者保護対策などに適合させるには、共用という手段を使うのが一番の近道のよう。
でも、プラットホームが共用されていても、クルマの雰囲気、ハンドリング、乗り心地などはそれだけで決まるものでは無いですよね?
プジョーとシトロエンはグループ会社としてプラットホームを共用しているが、それぞれ独特のデザインや油圧サスペンションにより、明確な差があるし。
これからはプラットフォームを意識してカタログや雑誌を見ていると、意外な兄弟車が発見できるかもしれませんよ!